或る伝承




遥か昔、宇宙の混沌とした空間の中に小さな惑星があった。
人々は穏やかな生活を送り、やがて大地に恵まれていった。


しかし、安息の日々に終止符が打たれる事件が起きた。
後に『ベルセルク・ディザスター』と呼ばれる紛争の勃発である。
ベルセルクと称する集団は、惑星を我がものにしようと動き出した。
それを食い止めようとする防衛軍は
12個のキーストーンと呼ばれる術力を込めた石を生み出し、
その力でベルセルクの攻撃を防いだ。


けれど、その防衛は無惨にも破られた。
争いで弱い者も強い者もベルセルクも防衛軍も等しく命を散らし、
大地は荒廃し、その惑星は遂に崩壊した。


再び無に還った惑星は欠片となって宇宙を彷徨った。
その欠片と同じように、
争いで犠牲になった人々の残留思念も行く当ても無く彷徨った。
そして、約千年の月日が流れた。


宇宙に創造主が舞い降りた。
行き場の無い残留思念を創造主は総て抱き、
神獣マルドゥークを召喚して浄化した。
同じ過ちを二度と繰り返さぬことを条件に再び大地を創造し、
残留思念を輪廻に戻して命を与えた。
ベルセルクの残留思念は宇宙に漂っていたキーストーンを集結させ、
亜空間に封印された。
そうして生まれた世界がヴォイエントである。






人々は誓約を守って紛争に成るほどの争いは起こさずに生活していた。
創造主は遥か彼方、クライテリアと呼ばれる地で眠りについた。




更に約千年後、事態は急変した。
キーストーンが何物かによって砕かれ、
亜空間にあった封印が解かれたのである。
ベルセルクの残留思念は人々を襲い、
命を奪われた人々の残留思念は輪廻に戻れずに彷徨った。
彷徨った残留思念は不死者と化し、
更に人々を襲い、その人々の残留思念は彷徨う。
いつしか哀しい連鎖がヴォイエントに生まれていた。




人々は創造主の救いを求め、祈り、すがった。
悲痛な叫びのもと、創造主・クレアが目醒めることを信じて。